2021.11.3
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なぜ無料? 賃貸物件の不思議~仲介手数料の仕組み
賃貸物件を探す際に、仲介手数料が無料となっている物件を見たことはありませんか。なぜ、仲介手数料を無料とできるのか、ここでは仲介手数料の仕組みと無料にできるわけを紹介していきます。
不動産会社(仲介会社)は、仲介手数料によって利益を出していますが、なかには仲介手数料が無料の賃貸物件も存在します。仲介手数料が無料となる仕組みは一体何なのか、ここでは仲介手数料を無料にできる仕組みとその方法について紹介していきます。
空室になるよりずっと良いと、空室対策として仲介手数料を貸主が全額負担しているケースは少なくありません。中にはさらに+1ヵ月分を広告宣伝費として負担しているケースもあります。これには、日本の賃貸物件事情も関係していると考えられます。日本では人口が減少しているにもかかわらず、それに相反するように賃貸物件の数はどんどん増加しています。都市部だけでなく、郊外や地方などいたるところで賃貸物件が建てられているのです。まず、都市部で賃貸物件が増加しているわけは、戦後以降ずっと都市部の人口は増加し続けていることが挙げられます。また、核家族化により世帯数は増加していることも、都市部での賃貸物件数の増加に拍車をかけています。
そして、郊外や地方で賃貸物件数が増えている理由としては、郊外や地方の高齢者が土地を賃貸物件へと転用していることなどが背景にあるでしょう。しかしながら、日本の総人口減少と反比例するように新築物件がどんどん建てられれば、空き物件は増えてしまいます。借主は、より設備が充実していて便利な物件へと移ってしまうのです。そのため、賃貸物件数が増え競争率が高くなっていることで、仲介手数料無料などの空室対策を講じている賃貸物件は意外にも多く存在します。
貸主から仲介手数料(賃料の1ヵ月分)1ヵ月分または仲介手数料(賃料の1ヵ月分)+広告宣伝費(賃料の1ヵ月分)計2か月分の報酬を受け取っている仲介会社では、仲介手数料を無料としているところもたくさんあります。貸主から支払われるだけで、仲介会社は利益が見込めるため、借主から仲介手数料を請求しなくても運営には問題が生じないのです。この貸主からの原資を元に他の仲介会社へ募集を依頼するケースも存在します。このように貸主の負担が大きいのが、現在の賃貸仲介市場の現実です。
不動産会社のなかには、仲介業だけでなく自ら物件を貸し出している会社があります。そうした物件では、そもそも仲介会社を通す必要がないので、仲介手数料自体がかかりません。このような賃貸物件では管理会社も同じであるケースが多く、借主は一貫して同じ会社にお世話になることになります。あちこちと連絡を取り合う必要がないため、契約がスムーズに行えると幅広い世代から人気を集めています。
仲介手数料とは、借主と貸主との橋渡しをしてくれる仲介会社に支払うお金のことです。仲介会社は、この仲介手数料をもらうことで利益を出しています。実は、マンションやアパート、一戸建てやテラスハウスを借りる際に結ぶ賃貸借契約では、請求できる仲介手数料の上限が決められています。借りる物件の賃料1カ月分が上限として設定されており、賃料が高ければ高いほど比例して仲介手数料も高くなるという傾向があるのです。
貸主が仲介手数料を丸々全て負担してくれるケースもあれば、貸主から広告宣伝費として1ヵ月、借主から仲介手数料として1ヵ月分または、借主と貸主から仲介手数料を半分ずつ請求する賃貸借契約も存在します。ところが、このように貸主が仲介手数料を負担してくれるケースが増えたのは、比較的最近のことになります(2020年1月時点)。2019年7月頃までは、借主が賃料1カ月分の仲介手数料を丸々負担するというのは当たり前のように受け入れられていました。実際に借主サイドからは、仲介手数料の一部を貸主が負担してくれているかどうかの事実確認はできません。現在でも借主に仲介手数料を請求し、貸主からも仲介手数料を広告宣伝費として請求している契約が殆どと言って良いでしょう。
上記で説明した通り、2019年7月までは借主に対して仲介手数料を1カ月分請求する仲介会社は多くみられました。しかし、仲介手数料をめぐって2019年8月7日に東京地裁がある判決を下したことで、仲介会社各社が仲介手数料の請求額を引き下げています。その判決というのは、借主に説明せずに仲介手数料を賃料1カ月分請求したとして、賃料0.5カ月分にあたる手数料を返還するよう命じたというものです。仲介手数料は賃料1カ月分までと上限が決められているものの、借主と貸主の双方から仲介手数料を請求されているケースが多くみられました。
しかし、本来であれば、借主と貸主の双方から仲介手数料を請求するとしても、仲介手数料は合計で賃料1カ月分までと決まっているのです。これは、間に不動産会社を何社挟もうが同じことで、仲介に2社かかわっている場合でも賃料1カ月分の仲介手数料を折半することになっています。もし仮に、借主に仲介手数料として賃料1カ月分を請求するのであれば、仲介手数料は全て借主が負担していることになります。このようなケースでは、不動産会社は借主に対して、原則として賃料0.5カ月分のところ、賃料1カ月分の仲介手数料を請求すると説明する義務があるのです。裁判ではその説明義務を怠ったとして、不動産会社は借主に対して仲介手数料を返還するように命じられました。この判決以降、あいまいであった仲介手数料はより明確化され、賃料1カ月分の仲介手数料を請求するときは事前説明が行われるようになっています。
仲介手数料が無料だからといって、借主に何かデメリットがあるわけではありません。むしろ、仲介手数料の分安く済ませられるので、費用を抑えたい人にとっては魅力的かもしれません。ただし、仲介手数料が無料であるからといって、費用が抑えられると判断するのは早計でしょう。なぜなら、仲介手数料が無料でも、その他の費用が高い場合があるからです。賃料と管理費用は勿論のこと、鍵交換代や他の名目での費用などはどうなっているかを確認し、トータルコストを抑えられる物件かを判断する必要があります。さらに、利便性や物件の構造や設備も加味したうえで、借りる物件を選びましょう。
以上